彼が、素早く、でも不思議にゆったりした動作でこちらを振り向く
顔に浮かぶは、穏やかなる問い掛け。
私は優しく笑いかけると、彼の額にある髪を指で除ける。
私の動作を不思議がって、少し首を傾げる
ゆっくりと、屈んで、
片手の指で、垂れてくる一筋の髪を押さえ
そっと、くちづけを。
緩やかに、頬が熱くなった感覚と共に、安らかに目を閉じる。
そして一拍の後、またゆっくり唇を離し、元の態勢に戻り、目を開け。
微笑みかける。
「びっくり、した。」
貴方は目を細めてちょっと嬉しげな笑みで、私を見上げる。
「ごめん、急に、ね。
したく、なったの。」
私と同じに頬を染めて、首を元の向きに戻した彼の身体に、後ろから少しずつ腕を回す。
体重は掛けずに右肩に顎を預け、呟く。
広い開け放った窓からは、カーテンを通した優しい日差しが差し込む。
私の頬を撫でていく風もまた、それと同様に優しくて。
貴方の両の手が、胸に当たる私の、何とはなしに組んだ手を包む。
そして頬摺りするように、私の横顔を頬で撫でた後、こてん、と頭をもたせかけてくる。
横に見える貴方の顔は小さな笑みを浮かべ。
そして、愛しげに語り掛ける。
「嬉しい、不意打ちだね
・・・あたた、かいな・・・」
「幸せ、だね・・・」
貴方は、沈黙という形で深い賛成の意を表し。
そのまま暫らく、二人で目を閉じて。
そよ風に、前髪が遊んでる。
この風の様な優しい刻が、ずっと、ずっと続いたら。
そんな願いは、胸に秘めて。
だから代わりに、今この少しの時間だけ
この幸せを、堪能させて・・・?
生きることの、幸せと
別れをもたらす、闇からの使者と
そのどちらをも、私たちは見てきたから、感じてきたから。
だから今は、今だけは、
何もかも、忘れ去ることを
貴方との幸せを、胸に焼き付けることを
許して・・・?
後書き |
夜中に眠れなくてごろごろしていて、不意に思いついたものです。 ざーっとケータイにメモしておいたのを、清書しました。
私達には無い事ですが、最近ファンタジー作品をよく読むので、「死との遭遇の確率が高い生活」というのが何故かとても近く感じます。
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